2013年7月7日日曜日

2016年7月7日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(131)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(128)
       内山 思考    読む

俳枕 江戸から東京へ(131)

山手線・日暮里(その31)
根岸(上根岸82番地の家⑯「子規庵」)
文:山尾かづひろ 

子規の句碑














都区次(とくじ): 前回は子規と一緒に中国へ渡った東京日日新聞の従軍記者・黒田甲子郎(こうしろう)の述べた軍の従軍記者に対する待遇は悪いもので、黒田は子規に極力帰国を勧めたそうですが、子規は明治28年4月13日から同年5月14日まで中国の金州・旅順に居たようですが、待遇が極めて悪いのに1ヶ月近くも居たというのはどうしたのですか?

 帰国へと子規の決意や夏帽子 畑中あや子

江戸璃(えどり): 子規も言ってみれば反対を押し切って従軍記者となった訳で、ちょっとの不都合で帰るわけにはいかないわよ。
都区次:それが帰国する決心をした 訳とは何ですか?
江戸璃: これは子規が従軍僧との待遇に差があることを抗議したのね。そうしたら軍の管理部長が「君らは無位無官じゃないか。無位無官の者なら一兵卒同様に取り扱われても仕方がない」と言い放ったのよ。子規はこの一言を聞いて帰国を決意したそうよ。私が思うに子規は帰国の「切っ掛け」を探していたのだと思うのよ。
都区次:休戦となれば日本の内地で受けるような記事も取れないでしょうからね。出国したときの状況を思えばただ単純に張り合いがないから帰国するとも言えませんものね。江戸璃さんはこの管理部長との遣りと取りを「切っ掛け」と感じた訳は何ですか?
江戸璃:従軍僧は軍が各本山に依頼して派遣してもらった資格のある僧侶で軍属なのね。これと従軍記者は同列のものじゃないことは子規も知っている筈で、無理に「切っ掛け」を探した感じがあるのよ。
都区次: 子規の従軍記者としての成果はなんですか?
江戸璃: 次回で話をしたいと思うけど従軍の様子を「陣中日記」として日本に送ったことと、軍医として駐留していた森鴎外に会ったことでしょうね。
都区次:ところで今日は日暮里からどこへ行きますか?
江戸璃:今、入谷で朝顔市をやっているから見に行かない?

朝顔市









人も知る朝顔市に参じけり  長屋璃子(ながやるりこ)
思ふこと朝顔市に話しけり  山尾かづひろ

尾鷲歳時記(128)

狩りの話
内山思考

こことここ切れと妻いうパイナップル  思考

これはお持ち帰りの分














先週まではそうでもなかったのに、一度に蒸し暑い日々が始まった。もう扇風機だけでは追いつかなくなったのか、妻はとうとう二階で冷房生活に入った。彼女の体のことを考えると、夏日を避けてそうやってジッとしているのがいいのだろうが、外で遊ぶのも大事な運動と言うことで、明日は友人たちと「ブルーベリー狩り」なるものへ行く手はずになっている。僕も一緒。でも、「狩り」という言葉は興味深い。

果物やキノコ、桜や紅葉など季節の風物の語尾へそれをつけると採取したり観賞して楽しむ行動を意味するわけだ。英語のHUNT(ハント)ともちょっと違う。例えば「ガールハント」を和訳したらかなり怪しげな雰囲気になる。話を戻して、実は僕は果物をたくさん食べるということをしない。その中の何を好むかともし問われても、ちょっと返答に困るぐらいである。しいて言えば、梨だろうか。それにしたところで一個食べれば充分だ。林檎しかり。かといって嫌いなわけでは決してない。

要はそれでもって腹を満たそうとは思わないということ、あ、いい例えを思いついた。果物を昔は「水菓子」と呼んだらしいが、普段、お菓子をたべて満腹になろうとは思わない、そんな感覚だろうか。ところが、今回の「狩り」を発案し誘ってくれたご婦人は、小柄な人なのに、イチゴ狩りなどに行くとイチゴ(一度)に四十個から五十個は軽いと事も無げに言って微笑む。「それが食べられるのよ思考さん」と。
ブルーベリー効果で
目許(めもと)涼しげ?な一行

僕はその話を聞いたとき、彼女の胃袋がイチゴでいっぱいになっているところを想像してしまった。「あと砂糖を食べてレモンを舐めて、飛んだり跳ねたりしたらお腹の中でジャムが出来ますね」と言った事だった。でその後、お昼はどこで食べます?と聞かれたので、僕はフクロウみたいに首を大きく傾けて、「ハ、ハア」と答えるしかなかったが、さてどんな「ブルーベリーデー」になることだろう。