2014年9月21日日曜日

2014年9月21日の目次

■ 俳枕 江戸から東京へ(194)
       山尾かづひろ  読む

■ 尾鷲歳時記(191)

       内山 思考    読む

尾鷲歳時記(191)

泣いて笑って秋 
内山思考 

コカリナはまごころの笛さやけしや   思考

桂文我さんのスケジュール








町のところどころに咲く百日紅もそろそろ見飽きて、暮らしの内外(うちそと)の光と陰、それに大気の肌触りにやさしい秋の気配がして来た。ずいぶん先のことだと感じていたのに、妙長寺での「第40回桂文我落語会」も予想通りの盛況で大笑いのうちにお開きとなり、恒例の打ち上げが、青木の奥さんのお手製料理と四方山話を肴に、ビールと焼酎の湯割りと番茶でこれまた夜更けまで笑ったり笑わせたり。

次回は来年の春になりそうだとのこと。年が変わる前にどこかの寄席に、また文我さんの噺を聴きに行ってもいいな、と思ったが、遠出になるから恵子の体調との相談になるだろう。それにしても、新鮮な刺身に寿司、エビと鱧のフライ、芋煮、煮豆、こんにゃく煮、カツオ生節に茎漬けなど山海の恵みは、本当にご馳走と呼ぶにふさわしい品々であった。ああ写メールを撮って置けばよかった。

黒坂さんと言えば木の笛コカリナ
1日置いて今度は、紀宝町鵜殿のミュージックカフェ、フォークスにて矢口周美(かねみ)さん黒坂黒太郎さんのコンサート、今回は昨年亡くなった周美さんの姉、歌手のたつの素子さんのバンド仲間、波多野信子さん(ピアノ)も出演、曲の合間の周美さんのMCを聞きながら、「たつの素子」という存在がいかに彼女にとって大きかったかがうかがえた。CDで聴くとしんみりする矢口周美の歌がライブだと泣けるのは不思議なのか当然なのか。とにかく清浄な気持になって帰宅したのだった。

俳枕 江戸から東京へ(194)

谷中(その3)
文:山尾かづひろ 


西光寺本堂









都区次(とくじ): 前回は谷中の瑞輪寺でしたが、今回はどこですか?

汗の身を韋駄天像につつしみぬ 冠城喜代子

江戸璃(えどり): 今回も大矢白星師が8月のお盆休みに谷中を歩いた分のトレースの続きなのよ。というわけで新義真言宗の西光寺へ行くわよ。西光寺は、佐竹右京太夫義宣公(法名浄光院殿傑堂天英大居士)が開基、宥義法印(俗姓佐竹大膳太夫義篤公二男)が開山となり、神田北寺町に慶長8年(1603)創建、慶安元年(1648)当地へ移転したと言われているわね。この寺の韋駄天像は、文禄(ぶんろく)・慶長(けいちょう)の役(えき)の際に水軍(すいぐん)を指揮した藤堂高虎(とうどう・たかとら)(1556~1630)が朝鮮より請来(しょうらい)し安置したものだそうよ。
都区次:韋駄天のことを教えて下さい。
江戸璃:韋駄天は、インドのバラモン教シバ神(しん)の子といわれているわね。 はじめは仏教を妨害する邪神(じゃしん)だったけれど、釈迦(しゃか)に帰依(きえ)してからは仏法の守護神となり、増長天 (ぞうじょうてん)の八大将軍の一つとされ、四天王(してんのう)三十二将軍神では筆頭(ひっとう)に置かれているそうよ。釈迦が涅槃(ねはん)の後、足の速い捷疾鬼(しょうしつき)が仏舎利(ぶっしゃり)から仏牙(ぶつが)(歯)を奪って逃げ去った時、これを追って取り戻したという説話から、より速い神として知られているのよ。このことからカール・ルイスのような足の速い人を「韋駄天」と呼ぶようにもなったわけ。 とくに伽藍(がらん)を守る神とされ、寺院(じいん)の厨房(ちゅうぼう)などにその像がまつられているのよ。修行僧が悪魔に悩まされるときは、走り来(きた)って救ってくれるのよ。足腰の病を平癒してくれる神として、また小児の病魔を除く神として信仰されているわね。

韋駄天像













韋駄天に追ひつかれたる鰯雲  長屋璃子
韋駄天像海渡り来しと鰯雲    山尾かづひろ