根岸(上根岸88番地の家③)
文:山尾かづひろ
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新聞「日本」創刊時の社員 |
都区次(とくじ):陸羯南は子規を新聞「日本」に入社させるつもりで編集長の古島一雄に逢ってみてくれと指示したところでしたね。
江戸璃(えどり):新聞「日本」は雉子町(千代田区神田司町2丁目)にあって、古島はそこで子規に逢って色々聞くわけよ。子規から大学があと1年残っているが、試験のために学問をするのが嫌になったと聞くと、大学卒が嫌いな古島は子規のこの一言で子規を気に入ったのよね。それはそれで良いのだけれど、子規の使い方が分らない。そこで時事を風刺するような俳句を試しに作らせたわけ。子規は即座に「君ヶ代は二百十日も荒れにけり」と作り、古島はうまいことを言いやがった、と感服して以後時事をよみ込んだ俳句を作らせたわけ。
編集長唸らす一句野梅咲く 吉田ゆり
都区次:そろそろ梅の季節になりましたが、子規は向島百花園に行ったことがありますか?
江戸璃: 子規は「入口に七草植ゑぬ花屋敷」という句を残しているし、日暮里から言問通りを歩いて簡単に行けるから他の時季に行っても不思議ではないわね。
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向島百花園 |
暮れ初めて梅匂ふ道狭まりし 長屋璃子(ながやるりこ)
梅の香を運ぶ瀬音のありにけり 山尾かづひろ