2011年10月2日日曜日

尾鷲歳時記 (36)

風の便り・時のハガキ
内山思考 

「君恋し」はフランク永井火恋し 思考 

清崎守人さんの絵手紙

















悪筆だが筆まめの方だと思う。 書くことが少しも苦にならないので、必要に応じてほとんど毎日、原稿用紙や便箋、ハガキに蕨の頭のような文字を並べている。 「わらびならび四百字詰原稿紙・悟朗」 どれほど苦にならないかというと、平成四年の大矢数で4797句を詠んだ時が多分最高だと思うが、これに17をかけて、81549字を一昼夜で書いた。24時間で四百字詰の原稿用紙二百枚、アレ、思ったより大したことないな。

最近は、携帯でメールを打つことを覚えたので知人、友人とのやり取りも案外楽しい。 しかし、やはり手書きの便りが一番好きだ。書いた人の個性と書くために費やした時間分の想いが、いつまでも手元にあるというのはとても素晴らしいことだ。 絵手紙もひと頃はブームになって、僕も一度、付き合いで講座に出かけたが、筆の持ち方や運び方が決まっているから自己流は駄目、と言われて二度目は遠慮した。美人の講師だったので少し残念だった。

その時、僕が清崎守人さんの絵手紙を数枚持っていると言ったら、彼女はとても驚き、清崎さんは伝説の絵手紙作家で、私もたった一枚持っているだけなの、とすごく羨ましがった。 20年近い昔、たしか志摩の郵便局に勤めていた清崎さんが、僕のエッセイの挿し絵を描いてくれた縁で、打ち合わせを兼ねて、何度か便りを戴いたことがあったのだ。清崎さんはその後、若くして亡くなられた。

新聞小説は週一連載、
ジュリエット・グレコ
を聴きながら
伊丹三樹彦さんの写俳ハガキも見ているだけで海外にいる気持ちになれるし、源城素子さんの植物スケッチハガキも心が落ち着く。 まったく絵ハガキ(絵手紙)は空飛ぶギャラリーである。だから旅行や美術館に行くと必ず絵ハガキを買ってくる。尾鷲の物もあるにはあるが、最近は世界遺産になった「熊野古道」関連が多く、どこか物足りない。尾鷲神社や港や、中村山の天文館、天狗倉山などがあれば、といつも思う。