2011年11月20日日曜日

私のジャズ (46)

ミスターB
松澤 龍一

BILLY ECKSTINE TOGETHER (Spotlie 100)













ミスターBの愛称で一世を風靡した黒人歌手ビリー・エクスタイン、甘い歌声で、その後、パット・ブーンやアンディー・ウイリアムスなどに通じる美声シンガーのはしりとなった。彼はジャズシンガーでは無い。ジャズには無縁のところに居た人である。

ところがジャズには大変な貢献をしている。それは、偉大なジャズファン、それも、その当時芽生えたばかりのビバップと呼ばれ、いわゆるモダンジャズへと発展する音楽の信奉者であった点である。趣味が昂じて自分でジャズのバンドを作ってしまった。バリバリのビバップをやっていた若手を集めて自分のビックバンドを作った。

彼のバンドのラジオ録音を集めたのが上掲のレコード。一つ一つがすさまじい演奏である。火の出るような演奏である。新しい音楽を創造するとの熱意がラジオのスピーカーから飛んでくる。

夭折のトランペッタ―、ファッツ・ナバロが聴ける、デビュー当時のサラ・ボーンが唄う。やたらと大きな音ではしゃいでいるドラマーがいる。若き日のアート・ブレキーである。御大ビリー・エクスタインもトランペットで参加しているが、これは旦那芸の域を出ない。やはり、ミスターBはメローなバラードを唄うに限る。



どうもジャズプレヤーはこのように甘く唄う歌手が好きなようだ。パーカーはアール・コールマンと言うミスターB系の歌手と一緒にバラードを吹きこんでいる。コルトレーンにはジョニー・ハートマンと共演した有名なアルバムがある。