松澤 龍一
今年もまた野田にお祭りが来た。愛宕睦会の一員として神輿を担ぐ。今年も担いだ。年々、担ぐ距離が短くなる。途中でへばる。ビールが飲みたくなる。飲むと地べたに座り込む。一旦、座ってしまったら、もう担ぐ気にならない。アルコール(お神酒)の混ざった脳にお神輿の喧騒が快い興奮をもたらす。産土神と一体になる。お神輿の囃子言葉で「ワッショイ」がある。「和を背負う」が語源と言われているが、韓国語の「ワッソ」(来た)だとの説もある。「ワッソ」の方がロマンがある。朝鮮半島から渡って来た人たちが、お神輿に「来た、来た、神が来た」と囃している方が面白い。
ドン・チェリー、オーネット・コールマンの The Shape of Jazz To Come と言う衝撃的なアルバムで登場したバリバリの前衛コルネット奏者である。その後、ジョン・コルトレーンやアルバート・アイラーと共演したり、自分のコンボも結成したりして、数々の斬新な作品を発表し続けていた。純粋のニグロでは無く、インディアンの血が混ざっていると記憶しているが確かでは無い。でも、バリのガメランと共演した Eternal Rhythm と言う名盤などを聴くと、どうしても東洋系の血を感じてしまう。
この音源の演奏など全く東洋的だ。東洋的と言うより日本的と言った方が良いかも知れない。おかめひょっとこが踊り出てきそうだ。エド・ブラックウェルのドラムは誰が聴いても祭囃子の太鼓と鐘である。この演奏の入っているアルバムは "mu" と題されている。当然、「無」のことに違いない。ジャズとはブルースの器楽化、都市化と自分なりに定義をしてきたが、このように、それぞれの人が持っている音調やリズムの原体のようなもの、時にはフォークロアであったり、童歌であったり、そう言ったものをベースにしたものもジャズと言って良いような気がしてきた。