内山思考
夏木立力余りて歌うなり 思考
お寺の本堂で胡弓を 披露したのは十年以上前 |
7月某日の夜、市内のスナックを借り切って自治会のカラオケ大会が行われた。これは毎年の恒例で、町内の一斉清掃と並ぶ初夏の二大イベントである。北浦町は4つのグループに分かれていて、僕の住む第2自治会は30軒ほど。港に近いのでもともとは漁師街といってよく、昔からの付き合いが多いため、総じてみんな仲がいい。当夜の出席は約二十名、まず最初に会長の挨拶があり、その後マイクは司会に渡された。
ちなみに司会は僕である。この会の特徴としては、歌いたい人は何十曲(実際には不可能)歌ってもいいこと、そして反対に歌いたくなければ最後まで聞き役もオーケーということである。要は苦手な人に無理強いしないし、もっと歌いたかった、の不満も無くすのが目的で、ある意味その方が平等かも知れないのだ。もちろん各テーブルの上にはお寿司あり軽食あり、ビールにおつまみありの食べ放題飲み放題、これで盛り上がらないわけがない。
かくして、その夜の尾鷲中の賑わいを一カ所に集めたような楽しい時間は過ぎ、カラオケ大会は会長と司会者の「まつり」熱唱で幕を閉じたのだった。司会者は他にも「ラブユー東京」「ウナセラディ東京」「哀愁列車」を歌った。彼は普段カラオケは嫌いだ、と公言しながらいざその場になるとついつい我を忘れる傾向があるようだ。で、また来年の7月にお会いしましょうと拍手喝采で解散したのだが、来年どころか明くる朝になると「オハヨー」と言い合う顔ぶればかりなのが面白いところである。
ウクレレの弾き語りも 確か四十代 |