2013年9月29日日曜日

尾鷲歳時記(140)

岸和田吟行のこと
内山思考 

曼珠沙華押し出して土一服す 思考

和田さんを挟んで次井さんと
六林男氏の娘さん二人
(燕子花の句碑の前で)










JR阪和線の久米田駅で和田悟朗さんと僕たち十名ほどがゾロゾロと降りると、改札口に次井さんと奥さんの笑顔が待っていた。超秋晴れの今日は、俳人鈴木六林男氏の墓参と句碑巡り、それに昼食親睦会を兼ねた岸和田吟行である。吟行と言っても句会は行わず、後日それぞれが二句をハガキで和田さんに提出し、「風来」の次号に掲載するということになっている。今回の手筈を整えて下さったのは、六林男氏と同じ岸和田生まれの次井義泰さん(第11回三鬼賞受賞者)である。用意されたマイクロバスは一同を軽く呑み込むと、まず六林男氏のお墓へと走り出した。

街の至るところに提灯が沢山見えるのは、岸和田だんじり十月祭礼の為のものだとか。山の麓をゆっくり上がって行くと、広い墓所があり、その一角に鈴木家のお墓が建っていた。その隣には有名な「天上も淋しからんに燕子花」の句碑も。法師蝉の鳴く中、和田さんはじめ全員が墓前に線香を手向け合掌。実はここで六林男氏の娘さんお二人が合流して下さり、僕たちは大いに感激したのであった。

次にバスが目指したのは牛滝山(大威徳寺)である。ここの牛滝川の上流にある滝で「滝壺を出でずに遊ぶ水のあり 六林男」が作られ途中にその句碑もあるという。昼食予定の「牛滝温泉・いよやかの郷」を少し通り過ぎて駐車、そこから木の枝を杖代わりにした和田さんを先頭に、石段と山道をしばらく登ると大きくはないが美しい形をした滝が現れた。

滝と思考
生前の六林男氏をよく知る次井さんはとてもいい人で、座を和ませながらの説明は丁寧で無駄がない。僕はふと興趣を覚えて一人で滝壺へ下りていった。水音を聞きながら大小の岩を伝って流れに近づき手を浸す。急ぐ水、遊ぶ水を眺めながら生々流転という言葉がふと浮かんだ。しばらくしてまた皆のいる場所へ上がっていくと、和田さんが僕を見て「なんや、泳いで来たんと違うのか」と言ってニッコリと笑った。