2013年10月27日日曜日

尾鷲歳時記(144)

雨とうどんと玉子の話
内山思考

ゆく秋の雨の烏として生きる 思考

うどん屋さんの前は熊野灘








猛暑が収束したと思ったら、夏の少雨を癒やすように台風が相次いでやって来る。この文を書いている午後も、強い雨が降ったり止んだりを繰り返しているが、原因は太平洋上を近づいてくる台風27号と28号である。本当にしばらく雨ばかりだ。昨日の朝、原稿を届けに新聞社に行ったら記者のUさんが「国道が崩れたそうだよ」と言って入れ違いに出て行った。

毎年、屋久島と年間降雨量を争う土地柄である。地盤も固くなかなか崩落など起きないはずだし、第一、災害が出るほど降ってないじゃないかと首を傾げたが、テレビのニュースを見ると確かに法(のり)面が崩れて道路をふさいでいた。本当の原因は何なのだろう。午前8時頃というからよく人的災害に繋がらなかったものだ。

幸い、この区間は別のルートが近年に開通したばかりなので、交通が遮断される心配はない。新ルートと言えば、尾鷲―熊野「旧木本(きのもと)」間も先月開通し、今まで4、50分かかっていたところを20分台で通行出来るようになったのは嬉しい衝撃だった。

熊野市内に勤め先のある娘は、20分余計に朝寝坊が出来ると大いに喜んで、いつもの時間に起きてこなくなった。しかし、それが当たり前になってしまうと、やがて便利を便利と思わなくなるだろう。人間とはそういうものだ。僕は今朝、その道路を通って熊野へ昼食を食べに行こう、と妻を誘った。花の窟(いわや)神社の近くに美味しい讃岐うどんの店があるのだ。

沖縄で買った貝殻を眺めて雨ごもり
今までの半分の時間であの味にたどり着けるのだから浮き浮きする。で、どんより曇った水平線を眺めながら、彼女が「なべ焼うどん」を、僕はいつもの「味噌煮込みうどん、山菜めし大盛り」を注文したのが三時間ほど前。ここの味噌だしは一見濃厚そうでじつは濃からず薄からずの絶妙な案配なのだ。汁の中の玉子は最後まで残して置いて妻にプレゼント。好物なのにいつもそうしてしまうのはなぜだか自分でもよくわからない。