文:山尾かづひろ
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ケーブルカー |
江戸璃(えどり):やっと初秋という感じになったわね。
都区次(とくじ):前回は目黒自然教育園でしたが今回はどこですか?
邯鄲を聞く残り世のひと夜かな 戸田喜久子
江戸璃:邯鄲(かんたん)を聞きたくなったので、私の独断と偏見で武州御岳山(ぶしゅうみたけさん)へ行くわよ。
霧を飛ぶ鵤(いかる)一声三声かな 高田文吾
山を出て山へ沈む日胡麻の花 山本都風
邯鄲の枕辺近き御師の宿 内海よね女
邯鄲の鳴く音の闇に目をとじて 藤尾尾花
邯鄲の音にのぼりきし山の月 松本光生
邯鄲のフヒヨロと聞きルルと聞き 卜部一秋
邯鄲の一つに耳を澄ましをり 柳沢いわを
江戸璃:若い頃は大矢白星師の案内でケーブルカーがあっても使わないでJR五日市線の武蔵五日市駅からつるつる温泉行きのバスで白岩の滝入口へ行って、そこから日の出山をへて武州御岳山へと歩いて行ったのよ。
子をあやす庭涼しかり御師の宿 小川智子
江戸璃:今はJR青梅線の御嶽(みたけ)駅からバスで滝本へ行って、そこからケーブルカーで武州御岳山へ行くわよ。
喝入れて時を止めたる滝行者 高橋みどり
秋蝉の声に目覚めの御師の宿 白石文男
昼の虫夜具を積みあぐ御師の宿 近藤悦子
時鳥御嶽神社を独り占め 油井恭子
秋落暉武州御岳の空を染む 石坂晴夫
古瓦竜動き出す星月夜 甲斐太惠子
江戸璃:御岳山の上は涼しくてよかったわね。帰りもケーブルカーに乗って山を下りるわよ。
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御師の宿 |
御師の宿客人発ちて昼の虫 長屋璃子
一岳に一診療所蓼の花 山尾かづひろ