2011年5月29日日曜日

尾鷲歳時記 (19)

写真家の梅津さん
内山思考 

 仏滅の後は大安白牡丹   思考 

思考が撮った梅津さん












梅津正興(うめづ・まさおき)さんは、京都出身の元プロカメラマンだ。東京での忙しい生活を切り上げて縁もゆかりもない尾鷲に移り住み十四年、会社勤めをしながら写真サークルの指導などをしている。 以前から顔馴染みだったが、一時期、市民文化会館の館長をしていた梅津さんから、文化振興会の運営委員をと誘って頂き、それ以来、親しく話すようになった。

温厚篤実、とはこの人のことだ。いつも笑みを絶やさないところは以前紹介した「星追い人・湯浅祥司さん」に似たタイプとも言える。やはり、豊かな感性を持って人生を楽しんでいる人は、聖人めいた雰囲気を持っている。らしさ、が鼻に付かないから、こういう人を僕は尊敬する。 情景のピックアップという点で、俳句と写真はよく同一視される。僕の憧れの伊丹三樹彦さんの「写俳」は、(あうん)の狛犬の如く写真と俳句が見事に融合していて、ここまで行くと一つの芸術分野だな、と戴いた写真集を見つめてはいつも感嘆する。
一杯機嫌の梅津さんが
撮った思考

話を戻して、丁度、梅津さんが市立中央公民館のロビーで写真展をしているので作品を鑑賞しがてら本人に会いに行った。「あ、思考さん」といつもの笑顔。 東京時代は、あらゆる人や風物を撮りまくって、映画、寅さんシリーズの歴代マドンナもレンズの中に納めたという話をしてくれた。

中に、一人だけ例外、つまり被写体になって貰えなかった女優さんがいた。 吉永小百合さんである。 一社の要望を受けてそれが前例になると困るから、というのが理由だったそうだ。 成る程、そう言うものなのか。でも、これも以前紹介した俳優・榎木兵衛さんの思い出話に、撮影所に誰も居なくなってから、「エノやん、一緒に写真撮ろうよ」とさゆりちゃんが満面の笑顔で手招きしてくれた、というエピソードがあったから、プライベートの吉永小百合さんは、きっと明るくてやさしい人に違いない。