2011年10月16日日曜日

私のジャズ (41)

大坂ド演歌とマタイ
松澤 龍一

メンゲルベルク指揮 バッハ「マタイ受難曲」 
(PHILIPS PHCP-20493/5)












今回は「マタイ受難曲」である。ジャズでは無い。一般にクラシックと呼ばれているものである。それも、大バッハの作品、それも、大宗教曲である。全体を聴き終えるのに3時間を要する大曲である。私の愛聴曲で、CDも4組ほど持っており、毎年3月から4月にかけて東京で行われるコンサートには欠かさずに行っていた。ヨーロッパでは3月になるとあちこちで「マタイ」が演奏されると、オランダの友人が言っていた。この友人も、又、マタイフリーク。「マタイ」の演奏の極めつけは、やはりこのメンゲルベルクのものであろう。録音は1939年4月2日アムステルダムでのライブ録音である。ひと昔もふた昔も前の指揮者であるメンゲルベルクの時代がかった指揮が素晴らしい。アリアではアルトの歌手が粘る粘る、これほどかと言うまでに感情を込めて歌う。聴衆のすすり泣きが聞こえる。これを聴くと思いだされるのが中村美津子の大坂ド演歌。このアリアはこんな感じであるが、勿論、音源はメンゲルベルクのものでは無く、最近のもの。従って歌も中村美津子風では無い。


字幕を良く見てほしい。コテコテ大阪弁だ。嬉しくなった。マタイに大坂、それも通天閣辺りのディープな大坂を感じ取ってくれた人がいることが嬉しい。マタイは堂々たる合唱曲を持って幕が開く。




これから、途中休憩を挟んで、3時間強マタイの世界に浸かることになる。なかだるみもある。眠くなることもある。お腹がすくこともある。ぐっと、これらを我慢することが肝要だ。一度さわりの部分だけ編集してみたことがある。全然感動をしなかった。やはり、これらに耐えてこそマタイ受難曲の本当の良さが体感できる。そして、迎える終曲。感しますね!