2011年10月16日日曜日

俳枕 江戸から東京へ(41)

亀戸界隈/亀戸天神
文 : 山尾かづひろ  挿絵 : 矢野さとし 

亀戸天神














都区次(とくじ): 今度は亀戸周辺を歩いてみましょう。亀戸と言えば亀戸天神が有名です。祭神・菅原道真公(菅公かんこう)の「東風(こち)吹かば匂ひをこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春な忘れそ」の歌と「飛梅」の伝説から九州福岡県の太宰府天満宮が天神様の総本社だ、というのは私なども知っている話ですが、太宰府天満宮と亀戸天神の関係は何ですか?
江戸璃(えどり): 正保年間(1644~1647)太宰府天満宮の神官だった菅原大鳥居信祐(菅公の末裔)が神のお告げによって菅公ゆかりの「飛梅」の枝で天神像を刻んで、天神信仰を広め社殿建立の志をもって、遠くは日光・盛岡などの諸国を巡り歩いて、のちに江戸の本所亀戸村にたどり着き、元々村にあった天神の小さな祠に、その刻んだ天神像を祀ったのが始まりなのよ。
都区次: それにしては、この神社の規模は、そんじょそこらの神社とは比較になりませんね。
江戸璃: そうなのよ、わけありのコンコンチキなのよ。そのころ明暦3年(1657)の大火があってね、被害から復興を目指す江戸幕府は復興開発事業の地として本所の町をさだめ、四代将軍徳川家綱は天神様を鎮守神として祀るようにと現在の社地を寄進したのよ。そして寛文2年(1662)、地形はもとより、社殿・楼門・回廊・心字池・太鼓橋などが太宰府天満宮に倣い造営されたのよ。
都区次: 亀戸天神というと鷽替(うそかえ)神事が有名ですが、どんなものですか?
江戸璃:鷽替神事は例年1月24日~25日におこなわれてね。縁起物である木彫りの鷽(ウソ)が授与されるのよ。「去年の悪(あ)しきはうそ(鷽)となり、まことの吉にとり(鳥)替えん」との言い伝えによるのね。
都区次:天神様ですから梅はどうなのですか?
江戸璃:それは当然、「梅まつり」があるわよ。例年2月の第2日曜日~3月の第2日曜日までやってるわよ。
都区次:藤も有名ですね。
江戸璃:「藤まつりは」4月25日~5月5日におこなわれてね。敷地内の藤棚が一斉に開花して、神社中が一面藤色に染まるのよ。太鼓橋の上から見渡すことで、一面の藤棚を上から見下ろせることも特徴ね。江戸時代から亀戸の藤と呼ばれた藤の名所なのよ。

亀戸天神藤まつり



















橋脚に亀の集へり水の春   長屋璃子(ながやるりこ)
境内に詩吟朗々梅は実に   山尾かづひろ