2012年1月15日日曜日

私のジャズ(54)

ビックT
松澤 龍一

JACK TEAGARDEN THINK WELL OF ME
 (Verve V6-8465)










歌を聴くと何だと思う。何だこの酔っ払いのおじさんはと思う。呂律も回らない、言語不明瞭な歌なのである。この人、ジャック・ティーガーデンと言って「トロンボーンの父」と称されるとても偉いトロンボーン奏者なのである。

ジャズ発生当時から、トロンボーンと言う楽器は使われていた。キッド・オリーと言う有名なトロンボーン奏者がいた。この当時の奏法はテイルゲート奏法と言われている。馬車などの乗り物でバンドが演奏しながら行進する時に、トロンボーンのスライドする管が長いため、いつもお尻の方に乗って、乗り物から突き出すように管を動かしていたことに由来する名前である。その頃、トロンボーンはあまり花形の楽器ではなく、トランペットやクラリネットの伴奏あるいは単なる味付けに使われいたに過ぎない。

ジャック・ティーガーデンは、トロンボーンで本格的なソロを取り、トロンボーンをジャズの楽器として位置づけた最初の人と言われている。それが「トロンボーンの父」の由来だろう。でも、彼のトロンボーンの演奏をいくら聴いてもピンと来ない。やはり、トロンボーンはビ・バップ後のJ.J.ジョンソンの出現をもって、楽器として本当の存在感を得たように思える。

トロンボーンはう~んだが、歌はなかなか良い。歌から酒が漂う。一気飲みしたバーボンのストレート数杯が匂う(ちなみにジャック・ティーガーデンはテキサスの生まれ)。この酔っ払い唱法はディーン・マーチンに引き継がれていると思うのだが。

では、アメリカご当地ソングの名曲「星降るアラバマ」を聴いてみよう。