2012年5月6日日曜日

私のジャズ(70)

ロリンズ?
松澤 龍一

SONNY ROLLINS TOUR DE FORCE
 (prestige 7126)













ロリンズ? ソニー・ローリンズのことを粋がって、通ぶってそう呼んでいた。ちなみにマイルス・デイヴィスはデビスであった。ソニー・ローリンズ、紛れもなきモダン・ジャズの巨匠であるが、私がジャズを一番聴いていた60年代にはすでに過去の人になりかけていた。50年代の末に引退を表明してジャズ・シーンから姿を消す。

その後、ギターのジム・ホールを従えて「Bridge」というアルバムで再デビューするが、ニュー・ジャズとロック化が席捲していた60年代のジャズ・シーンにソニー・ローリンズの生きる場所は無かった。ソニー・ローリンズはあまりにソニー・ローリンズであり過ぎた。その完璧さゆえ、これを壊して別の何かを創造することができなかったのだろう。

細々と演奏活動は続けていたようである。Yutnbeには最近と思われる演奏が載っている。生まれは1930年なので、歳は80を超えている。目を覆い、耳を塞がんばかりの凋落ぶりである。やはり再デビューはして欲しくなかった。あのまま引退していて欲しかった。

上掲のアルバムを含め、彼が50年代にプレスティッジに吹き込んだ一連のアルバムは、どれをとってもジャズ史上に燦然と輝く金字塔である。サッチモをテナーで吹いたのがコールマン・ホ―キンスであれば、パーカーをテナーで吹いたのがソニー・ローリンズだ。パーカー並の高速パッセ―ジを軽々とテナーで吹く、そのテクニックには舌を巻く。

ドラムのマックス・ローチとのコラボも抜群で、正にジャズの醍醐味を心ゆくまで味あわせてくれる。50年代のプレスティッジへの吹き込みでは、例の「マック・ザ・ナイフ」(アルバムの曲名では「モリタート」)が有名だが、ここはコール・ポーターの It's alright with me  を聴いてみよう。マックス・ローチが素晴らしい。