2012年6月10日日曜日

尾鷲歳時記(72)

紫陽花(オタクサ)
内山思考


鬼の汗こたびは伎芸天に惚れ  思考


玄関を開けるとこの風景










 

AKB48の人気順位を決める総選挙が行われた。 例の大人気のアイドルグループである。 NHKの夜のニュースで取り上げるぐらいだからもはや社会現象といっていい。 たいして急ぐ用事もなし、開票結果を知らせるテレビの生中継を見ていた。もっともその番組だけでなく、例によってリモコンを離さず、チャンネルをあっちこっちへ変えながらの観賞である。いい年をしてというなかれ、一応は世の中の情報をチェックしているつもりなのだから。周知のごとく、AKBはアキバつまり東京秋葉原のこと、その他SKEは名古屋のサカエ、NMBは大阪難波、HKTは九州博多と各地に姉妹グループがあってそれぞれが地方で活躍している。

この斬新なシステムの仕掛け人は作詞家で芸能プロデューサーの秋元康さんだ。一人のアイドルの場合、やはり好みがあってファンも分散してしまうが、グループの、例えば懐かしいキャンディーズだとランちゃんスーちゃんそしてミキちゃんの三人分のファンがついて来るというわけで、AKBにいたっては数十人単位の選択肢があるのだから、営業方法としてはまさに最強と言える。

しかし悲しいかな、おじさんには画面に登場する女の子の顔が皆さん同じに見えてしまうのだ。ハハハ。「父は誰が好きなん?」 何か取りに来たむすめが僕に聞いた。「前田敦子かな」「私も」親子同意見でなんだか嬉しい父である。昨年一位だった彼女はしかし、今回は立候補を辞退したからランク外で、結局、予想通り大島優子が11万票近くを獲得してトップになった。

義従兄の自慢の
額アジサイ
僕はいつもこういう華やかな舞台の裏にはやはりいろんな苦労があるのだろうな、と考えてしまう悪い癖がある。あれだけのメンバーがいれば派閥も出来、嫉妬もあろう。それを見せないで笑顔で歌い踊る彼女たちはきっと可愛いばかりでなく、精神的な逞しさを持っている強い女性に違いない。今が人生のピークでないことを祈るばかりである。僕はふと町のそこここに咲く紫陽花に彼女達の姿を重ね合わせていた。


紫陽花(オタクサ)のやたらに咲くはかなしけれ  和田悟朗