2012年10月7日日曜日

俳枕 江戸から東京へ(92)

三田線に沿って(その7)樋口一葉と半井桃水
文:山尾かづひろ 挿絵:矢野さとし

桃水旧居近くの平河天満宮


















都区次(とくじ): 一葉は本郷で小説家を志し、名を残したとのことですが、指導者的な人は居たのですか?
江戸璃(えどり): 居たのよ!半井桃水(なからいとうすい)という対馬出身の東京朝日新聞の小説記者で、一葉にとっては指導者であって恋人でもあったのよ。一葉は桃水が妹の友人・野々宮起久(ののみやきく)の女学校の級友の兄という縁で指導を受けはじめたのよ。

月天心執筆の灯のまだ消えず 佐藤照美

都区次:桃水が一葉に指導したという最初の実績は何ですか?
江戸璃:桃水は麹町・平河天満宮の近くに住んでいたことがあって、その麹町時代の明治25年3月に桃水主宰の雑誌「武蔵野」に一葉の処女小説「闇桜」を載せてやったのよ。そして何と同じ3月に一葉の住む菊坂近くの西片町に転居してきたのよ。
都区次: その後二人はどうしたのですか?
江戸璃: それがね、二人は独身でしょう。当時、結婚を前提としない男女の付き合いは許されない風潮でね。うわさの広がった一葉は「萩の舎」の師匠・中島歌子に叱責されて絶交せざるを得なくなっちゃったのよ。
半井桃水












菊坂や恋実らざり秋袷 長屋璃子(ながやるりこ)
十三夜軒々低き坂の町 山尾かづひろ