松澤 龍一
ジョン・コルトレーン |
マイルスの元を離れたジョン・コルトレーンは、一時期、セロニアス・モンクのコンボに参加する。「ファイブスポット」(ニューヨークのジャズクラブ)での伝説的なライブで彼のシーツオブサウンズと呼ばれる独特なスタイルを確立したと言われる。アトランチックレコードへの臨時編成のコンボでのリーダーアルバムを数枚吹き込み、その後、恒久的なコンボを編成する。
メンバーはテナーサックス、ソプラノサックスのジョン・コルトレーンにピアノのマッコイ・タイナー、ベースのレジー・ワークマン(その後ジミー・ギャリソン)、そしてドラムスがエルヴィン・ジョーンズのカルテットである。このコンボを史上最強のコンボに挙げたい。主な録音はインパルスレコードに残されているが、変貌するジョン・コルトレーンを余すところ無く捕らえている。
当時新進気鋭のドラマーであったエルヴィン・ジョーンズとのコラボレーションが素晴らしい。エルヴィン・ジョーンズのポリフォニックなドラムスにコルトレーンの細かな音符をどんどんと積み重ねてゆく奏法が実に良くマッチしている。
ソプラノサックスをモダンジャズの楽器として定着させたコルトレーンの功績も忘れてはならない。それまでにスイングジャズ期のシドニー・べシェやモダンジャズになってからもスティーヴ・レイシーなど、ソプラノサックスを吹くプレヤーはいるにはいたが、コルトレーンほどこの楽器で多くの名演をなしえたプレヤーいないはずだ。コルトレーンがあまりに偉大だったためか、コルトレーン亡き後、ソプラノサックスを吹くプレヤーがあまり出ていない。
インパルスに残された「ヴィレッジヴァンガード」(ニューヨークのジャズクラブ)のライブから、「朝日のようにさわやかに」(Softly As In A Morning Sunrise)を聴いてみよう。最初、少し長めのピアノによるテーマの提示とソロが続く。バックのエルヴィン・ジョーンズのブラッシュワークが素晴らしい。元々、エルヴィン・ジョーンズのブラッシュワークは定評があったが、改めて聴いてもそのリズム感、切れに感動する。
コルトレーンのソプラノサックスのソロが始まる。エルヴィン・ジョーンズはブラッシュをスティックに持ち替えコルトレーンをサポートする。実にスリリングだ。元来、この曲はシグマン・ロンバーグが作曲し、オスカー・ハマースタイン2世が作詞したミュージカルの甘い恋歌である。それをこれほどまでに生き生きとしたジャズに作り変えてしまう。やはりこのコンボはモダンジャズ史上最強のコンボに挙げても良いだろう。