内山思考
無事と見ゆ甘蔗刈りおりと便り来て 思考
山田實写真集と ヒロコさんに貰った沖縄の歳時記 |
3月いっぱいで妻が長年の役所勤めを退くので、4月、一週間ほど沖縄へ行くことになった。腎臓に慢性の病を抱えているので、極端な暑さや寒さが他人より苦手な妻は、以前から退職後は今帰仁(なきじん)あたりへ家を借りて、冬場はそこでのんびり暮らしたいと言っている。今回はその下見も兼ねての小旅行なのだ。泊まりは毎回、知人の紹介で国際通りのホテルを利用することにしている。
一緒に遊んで貰うメンバーもほぼ決まっていて、いつもメインの観光地以外の場所へ連れて行ってくれる。沖縄そばやチャンプルーも店によって味が違うから食べ比べも楽しみだ。前回(一昨年)巡り合ったそば屋は出汁があまりに旨くて、僕たち夫婦は出汁だけお代わりして丼一杯飲み干したぐらいだった。
いつも運転手をかって出てくれるタカシさんは、七十代とは思えぬファイトマンで、カラオケ店でビールジョッキ片手に渋い喉を聴かせた後、膝が悪いと言いながらボーリングを何ゲームか投げる人。タカシさんの幼なじみで滞在中の一切を仕切ってくれるヒロコさんは、トヨタ・カリーナを華麗なハンドルさばきで操る。この愛車、40年乗っていると言うから驚きだ。本土復帰前の車だからもちろん左ハンドルである。「よほどいい車運に恵まれたんだね」と言ったら、「運転手がいいからですよ」と返された。その通りに違いない。
守礼の門に立つ上江州さんと 40年代?の絵葉書 |
もう一人、上江州さんも僕たちを待ってくれている。元刑務官で、柔道で鍛えた身体は金太郎のイメージだ。みずから編集発刊する冊子「がじまる」には俳句仲間の作品以外に、おもろ、琉歌、民謡、短歌、詩、川柳などが盛り沢山だ。いつだったか、南風原(はえばる)陸軍壕跡へ案内して貰った時、上江州さんは「僕の身内はこのあたりで亡くなったと思う。だから骨の上を歩くようで・・・」と言った。僕はその言葉から次の一句を得たのである。
地を踏むは骨踏むことや沖縄忌 思考