2013年8月18日日曜日

尾鷲歳時記(134)

夏期休暇
内山思考

紀伊半島はインドの形残暑なる  思考


閑静で美しい三木里海水浴場











桑名に住む姉と甥の一家がやって来た。会社員の甥がやっと休暇をとれたようである。みんな海好き魚好きだから、尾鷲は彼らにとって最高の避暑地なのである。その夜は海の幸に舌鼓を打って、明くる日、市外の三木里へ海水浴に出掛けた。朝から日射しが強く水遊びには絶好のコンディションである。目的地は僕の家から三十分足らずだからすぐ到着、甥夫婦と浮き輪を持った子供二人(女の子)は早速波打ち際へ向かい、僕も少し遅れて後を追った。妻と姉は海の家の縁台で見張りとお喋りが役目である。

しかし、海水浴なんて久しぶりだ。広い砂浜にはアベックやら家族連れが結構来ていて、時が経つにつれその数はどんどん増えているように思われた。腰まで水に浸かるとひんやりとした冷たさに一瞬躊躇するが、思い切ってしゃがむと身体がすぐ海になじんで心地よい浮遊感に包まれる。甥たちが楽しんでいる様子に満足して、僕は少しだけ沖へ向かって泳ぐことにした。

海の家でくつろぐ妻(左)と姉
やはりこういう場合、平泳ぎがスタンダードである。しかし、三十秒もたたないうちに、もたげた首が疲れてきたので仕方なく内山流の横泳ぎに変更した。


大洋の原虫として泳ぐなり  思考

その内に随分陸から離れた気がして、体を回してみると何のことはない。さっきの場所から20メートルほどの場所である。でも軽い疲労感を覚えたので一度あがることにした。
「ここ良いですね。水は綺麗だし、混んでないし」と甥は白い歯を見せる。小学一年のお姉ちゃんはスイミングスクールに通っているから水が怖くないと見え、息継ぎをする間も惜しんで潜って遊んでいる。妹も海が初めてという割にはバタ足が上手だ。僕はついつい笑顔になってしまうのだった。

さて海を出て、妻たちのいる日陰を目指して歩き出したのはいいが、日が高くなるにつれ砂が灼けてきたらしく、耐え難いほど足の裏が熱い。「アツツ!」と叫びながら、青春時代に戻ったようなその感触がやけに懐かしかった。