2014年8月3日日曜日

俳枕 江戸から東京へ(187)

山手線・浜松町(その6)
文:山尾かづひろ 


心光院本堂









都区次(とくじ): 前回は浜松町駅の東側の芝離宮でしたが、今日はどこですか?

タワーへの西日眩しく寺参り 冠城喜代子

江戸璃(えどり):今日は浜松町駅の西側へ行くわよ。やはり13年ほど前に大矢白星師に連れて行ってもらった東京タワー近くの浄土宗の心光院へ行くわよ。境内には如来堂が建立されていて、中にはお竹如来が祀られているのよ。お竹は寛永年間、江戸大伝馬町の名主、佐久間家の下女で、荘内(山形県)の出身、生れつきいつくしみの心が深く、朝夕の自分の食事を貧しい人に施し、自らは流しの隅に網を置き、洗い流しの飯が溜まったもので済ませたそうよ。常に念仏を怠らず長寿を保ったそうで、この話を聞いた五代将軍綱吉の生母桂昌院はいたく心を動かされ、金襴の布に包まれた立派な箱に、お竹が使っていた流し板を納めて、増上寺別院であった心光院に寄進し、その徳行顕彰したのよ。お竹の話は浮世絵師の春信や国芳の題材ともなり、江戸名所図絵にも登場するのよ。一茶の「雀子やお竹如来の流し元」も、この話を踏んだものよね。
都区次:夕方になりましたが、今日はどうしますか?
江戸璃:近くに神谷町駅があるから日比谷線で帰るわよ。


心光院山門












鉄塔の下に寺あり秋の蝉 長屋璃子
塔頭にしては激し蝉時雨 山尾かづひろ