内山思考
冬ぬくしアンパン顔の自治会長 思考
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説白燕時代の和田さん 京橋駅で |
阪神淡路大震災から二十年たつという。テレビの特別番組を見ながら、もうそんなになるのかと思った。平成7年1月15日、つまりあの震災の前々日、41歳の僕は「白燕」の句会のために神戸の住吉にいた。僕は前年に和田悟朗さんの俳句に引かれて同人になったばかり、その日は少し早く行って花屋を探していた。正月にベテランのTさんが亡くなったと聞いていたので、Tさんがいつも座っていた席に花を飾ってあげたいと思ったのだ。
句会場は住吉駅前のビルだったから記憶違いでなければ、その駅のホーム下で見つけた花屋に僕は入った。小さなスペースを一杯に使った店の主らしい女性は、カサブランカを包み始めたが、手を動かしながらもう一人の中年男性に「困ります」と言った。「灯油は駄目なんです」察するに彼女は、従業員の買ってきたストーブが気に入らなかったようだ。男は何かモゴモゴと返事をした。
「火が危ないから・・・電気のに変えてきて下さい」丁寧な話しぶりからすると夫婦ではなさそうだ。静かな、しかし一方的に近いやりとりを背に、僕は花束を抱えて会場へ向かった。句会が終わってから、どなたかこの花を、と声をかけたが皆さん首を傾げて微笑むばかり。献花だから無理も無いが、五時間かけて尾鷲まで持って帰る訳にも行かず、思案していると「わたし頂くわ」と言ってくれたのが柿本多映さんだった。僕はホッとした。
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元白燕同人 坂本ひろし作の独楽 |