2015年2月8日日曜日

尾鷲歳時記(211)

誕生日のいろいろ
内山思考 

大陸や建国の日も動きおり  思考 


ヒロコさんから
手作りマフラーのプレゼント













2月11日が僕の誕生日である。今年六十二才になる。子供の頃母に「お前の誕生日は昔、紀元節言うて祝日やったんやよ」と聞かされるたびに、何で今は違うんや、と悔しい思いをしたものである。戦争に負けてそうなった、確か母はそう言った。「僕の生まれた日は(紀州ではヒイワ、と伸ばす)昔、学校休みやったんやで」、他に自慢するものがなかったから、せめて誕生日ぐらいは特別であって欲しいという単純な理由で、誰彼にそう言った記憶も懐かしい、と言うより恥ずかしい。

しかし僕の願いが天に通じたのか、中学時代、紀元節は建国記念日と名を改めて目出度く国民の祝日になった。嬉しかったはずなのに、その時どう喜んだか覚えていないのは、僕もちょっと大人になりかけていたからだろうか。でもまだ、誕生日にはすき焼きかカレーライスか助六寿司のどれか好きなものをリクエストすると、母が作ってくれていたから限りなく子供だったが。

ところで、建国記念日を詠った俳句と言えば 

建国日雄鶏を追ひかけてゐる  多映

が一番好きだ。軽快、重厚、広大、深甚といかようにも捉えられる句姿は魅力満載、さすが「感性の精霊、柿本多映」である。手元(沖縄)に資料が無いので、確認させて貰うために電話をかけることにした。「あらあ思考さん」、明るいいつもの声が耳に心地よい。良かった。声の元気は体の元気である。
「僕、誕生日11日なんですけどね」
「そうそう、私10日私の兄は9日」のやりとりの後、雄鶏の句が好きだと言うと、
「あ、あれね橋閒石(かんせき)さんも好きや言うてくれはった。そう言えば閒石先生も2月生まれよ」と話題は膨らむ。


骨董屋で陶枕発見








「どこが好きかって理由は言いたくないんです、ただ肌に合うというか・・・」
「それでええのよ、まずそれが先やから」
と暖かい俳句談義をしばらく続け「有り難う御座いました」「貴方もお元気で」と那覇、大津のはるかな語らいは幕を閉じたのである。