内山思考
一枚の津軽平野という代田 思考
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パンフ、マップいろいろ |
東北三日目の朝、ホテルの11階の窓を開けると青森の街は霧に包まれていた。今日の旅程に八甲田ロープウェイがあるのでちょっと不安になるが、バイキングの朝食を済ませて車で走り出すと、次第に蒼空が現れて素晴らしいドライブ日和になった。尾鷲は朝霧などまず出ないから、そんな気象も旅ごころをくすぐる。
車内に相変わらず笑い絶えず。一時間後、僕たちは八甲田連峰の大パノラマを見渡して歓声をあげていた。なだらかな山稜、ところどころの干からびた(ような)残雪、何を見ても珍しい。植生が東紀州とは大いに異なりそれも話題の多くを占める。「連れてきて貰って良かったね」僕と恵子は顔を見合わせて笑った。それから奥入瀬渓流を間近に雑穀米カレーの昼食、十和田湖畔でリンゴのソフトクリーム、と食欲も満たしながら、次に目指したのは岩手県滝沢市だ。
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木立で拾ったスカシダワラ(蛾の繭) |
「三内丸山遺跡」
過去未来ひと捻れして輪となりぬ
時空(ときうつ)ろ中身詰まって縄文人
生れてより五感で活きて風を読む
獲物待つ石より硬き意志を持て
言霊のまだ幼くて口ごもる
男の眼黒曜石を得て光る
穿たれし翡翠の孔へ息通す
白き魔の季節は遠し栗の花
縄文の火が熟睡子(うまいご)の頬照らす
星空や干肉噛(しが)む村の長
「弘前にて」
三重訛りみちのく訛りアップルパイ
初夏の日を廊下へ展げ色硝子
新緑の杜と林檎のパイの町
パイの店あまた五月の円周に
夏空に雪の高さを指す娘
だまし絵の街紫陽花へまた戻る
アップルパイに百態ありぬ麦の秋
窓外を園丁過ぎる夏館
名園や箱庭に似て喫茶室
(以上、東北行百句より)