2015年7月12日日曜日

尾鷲歳時記(233)

昼寝のタネ 
内山思考 

百年を行ったり来たり夏の蝶  思考 

書家、六車明峰さんの筆












家にいて用事の無い日は、昼食後を読書の時間に充てている。たいてい読んでいるうちに眠くなるので、読書と昼寝を兼ねたひとときと言うことにもなる。いまだ現役で緊張の日常を過ごしている人から見れば、呑気な暮らしに見えると思う。でも僕はやっとこの時間と空間を手に入れたのである。

それに、天手古舞の忙しさや肉体労働(頭脳労働苦手)がもともと好きだから、そんな状況がいつでも来てイイよ、の心積もりは持っている。もっとも本人がそう思っているだけで、僕の身体的持久耐久力はかなり劣化しているだろうから、大きなことは言わずに置こう。さて本日机上に上がった一冊はデイヴィッド・ボダニス著『E=mc2 世界一有名な方程式の「伝記」』(早川書房)である。いつ読もうかいつ読もうかと大切にとっておいた本で、それを読んでしまうとストックは『絵の教室』安野光雅著(中公新書)だけになってしまう。 

「活字渇望症」とでも言うのか、書架に未読のものが無いと妙に息苦しさを覚えるのは困った性分だ。禁断症状?が現れた際は、保存棚から沖縄関連本か芸術、自然科学系統のなるべく内容を忘れていそうなものを取り出して気を癒やす。例によって読めない漢字は漢語林を、不明な言葉は広辞苑をドッコイショと持ち上げページを割って調べてメモ。クロスワード好きの桑名の姉が「晴雄さーん(僕の本名)、これ便利よオ」と電子辞書をしきりに勧めても、へそ曲がりの弟は「ふ~ん」と鼻息を落とすのみ、えてしてこういう人間は時代に取り残されて行くのだがそれも仕方なかろう。

時間と空間を測る
読み出した冒頭の書はやはり面白かった。ファラデー、ラヴォアジエ、ニュートンなど歴史的な科学者の栄光と苦悩のエピソードが絡み合う中、アインシュタインがいよいよ模索の中に「相対性理論」を発見、宇宙の真理は果たして、のあたりでイカン、睡魔が…、斯くして思考は広辞苑を枕にいつもの昼寝を始めたのであった。