文:山尾かづひろ
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深大寺の太師堂 |
江戸璃(えどり):早いものね、先週の9日10日は浅草のほおずき市だったのよ。
鬼灯市荷おろす朝の活気かな 小川智子
曲がっても又曲がっても鬼灯市 戸田喜久子
白熱灯点し四万六千日 野木桃花
都区次(とくじ): ところで前回の7月5日は水元公園でした。
青鷺や水あふらせて小合溜 大矢白星
都区次:今回はどこですか?
梅雨茸を蹴って武蔵野自然林 藤尾尾花
水底のごと紫陽花のみちありし 松本光生
一礼し宝前を去る草取女 山本都風
写生子の一花に執す薔薇真赤 内海よね女
小流れに日の斑ちらちらあめんぼう 高田文吾
江戸璃:何年か前の深大寺吟行の作品を思い出したら、梅雨寒の中で深大寺そばの熱いの啜ってみたくなって、私の独断と偏見で深大寺と神代植物公園へ行くことにしたわけ。JR中央線の吉祥寺駅からバスで行くわよ。武蔵野の風情を色濃く残す一角に立つ深大寺は、天台宗別格本山の寺院で、都内では浅草寺に次ぐ古刹なのよ。その起源は奈良時代、満功上人によって創建されたといわれ、白鳳仏(釈迦如来倚像、国の重要文化財)、梵鐘(重要文化財)などの貴重な寺宝で知られているわよ。
乗り継ぎて真紅の薔薇にたどり着く 戸田喜久子
江戸璃:寺の北側にある公園はもともと、東京の街路樹の苗圃だったけれど、戦後、神代緑地として公開され神代植物公園として開園したのよ。
七月の武蔵野の森風を呼ぶ 白石文男
梅雨しとど頭(かぶり)艶ます撫で仏 石坂晴夫
深大寺へ転げ落ちたるかたつむり 甲斐太惠子
本堂の軒へ身を引く青蜥蜴 油井恭子
ありふれた秘密を持ちぬ薔薇の雨 高橋みどり
薔薇の名のモンパルナスと旅そそる 近藤悦子
江戸璃:帰りはバスで京王線のつつじヶ丘駅に出て帰るわよ。
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神代植物公園 |
夾竹桃日に抗ひて燃ゆるかに 長屋璃子
ランタナの花や梅雨明け近き空 山尾かづひろ