2015年9月13日日曜日

尾鷲歳時記(242)

拍手のお稽古 
内山思考

 皿の上秋刀魚ようやく個となりぬ  思考

控室で浜中さんと








「お宝」という言葉は昔からあるようだが、市井に眠っている書画や美術、骨董品全般を押し並べてそう呼ぶようになったのは、1994(平成6)年4月から始まったテレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の影響だろう。同番組で鑑定士としての人気を不動のものにした中島誠之助氏の「いい仕事してますねー」の決めぜりふを聞くと、みすぼらしかった古壺が画面の中で急にオーラを放つのだから不思議なものである。番組を見ていて子や孫に「この家にもお宝ないの?」と聞かれ、ウーンと首をかしげた人は全国にごまんと居るはずだ。「家族が宝物や」「そんなんと違うの」 と話題が進まないのは、ある意味幸せな証拠でもあろう。

さて先日、「鑑定団」を客席で見る機会を得た。番組にはスタジオを出て地方に出張するコーナーがある。隣の熊野市でその収録があり青木健斉上人の知人が出場するという。一緒に応援に行きませんかと誘われ、僕と惠子は大いに喜んで承諾した。当日は生憎の雨だったが、上人手作りの横断幕を持って会場入り、一応は関係者ということで控室に入れて貰った。

出品者は六名、それぞれのテーブルで取り巻きに囲まれ緊張の面持ちである。スタッフが一人づつ番組の進行について打合せ、僕たちが応援する浜中さんは、母親がお嫁入りの際に持参した赤絵の大皿を出すのだそうだ。健康志向なのか血圧計持参である。やがて一同は満員の会場内へ出陣、前から2列目に並んで座り横断幕を上げるタイミングを小声で話し合う。

関西圏は9月29日放映
事前にマエセツのお兄さんにさんざん拍手の練習をさせられたあと、舞台に先生方と司会、アシスタントが登場していよいよ本番開始。大声援に送られてカメラの前に立ったトップバッターの浜中さんの手首を見ると、なんと先ほどのハンディタイプの血圧計が。「何ですかこれ?」思わず突っ込む司会者に「血圧が心配で」とボケる浜中さん、かくして「出張鑑定団イン熊野」は爆笑と共に始まったのであった。