文:山尾かづひろ
下り簗 |
江戸璃(えどり):早いわね、今月の8日は白露だったのよ。
都区次(とくじ):前回は関口芭蕉庵で、
句碑の陰幽けき声の昼の虫 白石文男
破芭蕉なんと良い風そぞろ歩む 甲斐太惠子
さ緑に透きくる日差し竹の春 柳沢いわを
という景でした。今回はどこですか?
落鮎のごとき晩年とも思ふ 戸田喜久子
江戸璃:そろそろ落鮎の観光簗が始まるわね。十年ほど前に大矢白星師に栃木県那須烏山市の簗へ案内してもらった時は宇都宮まで新幹線で行って、ローカル線の烏山線に乗り換えて滝駅で下車して「竜門の滝」と榧(かや)の実と蛇姫様の墓のある「太平寺」を午前中まで見てね、午後に観光簗へ行ったのよ。
赤蜻蛉改札口のなき駅に 小川智子
榧の実や蛇姫様の墓を守る 小川智子
ぎしぎしと渡る仮橋簗場へと 大矢白星
下り簗かけて一水大曲 大矢白星
落鮎のもんどりうって手の中に 小林道子
下り簗に親指ほどの鯰かな 蓮見勝朗
落鮎を焼く鉢巻きのタオルかな 小川智子
下り簗眺め生簀の鮎を食ぶ 蓮見勝朗
下り簗地酒は東力士とか 黒沼たけし
江戸璃:というわけで、落鮎の美味いのを食べたくなったので、私の独断と偏見で栃木県那須烏山市の下り簗へ行くわよ。
白波の脛打つ流れ下り簗 白石文男
那珂川の流れ豊かに鮎落つる 白石文男
行き先を知るか知らずか落鮎よ 忠内真須美
下り簗魚跳ね踊る床の上 石坂晴夫
落鮎やオリーブ色の鰭をもつ 甲斐太惠子
日隠れば所在なげなる下り簗 近藤悦子
飛沫にも疲れの見えて下り簗 高橋みどり
下り鮎仄と香のたつ炭火焼 油井恭子
江戸璃:行きは新幹線を使ったけれど、帰りは時間的制約がないので在来線で帰るわよ。
炭火焼 |
ささくれに歴史思へり下り簗 長屋璃子
栃木路にかりがねの空ありにけり 山尾かづひろ