2015年10月11日日曜日

俳枕 江戸から東京へ(249)

板橋区松月院
文:山尾かづひろ  
挿絵:小倉修子  


実石榴












江戸璃(えどり):前回の寺家ふるさと村は吟行日和で何よりだったわね。

雲の上更に雲あり秋高し    柳沢いわを
振り向けば団栗落つる音なりし 福田敏子
猫じゃらし風を誘ひぬ畷道   白石文男

都区次(とくじ):ところで、今回はどこですか?

江戸璃:板橋区に古かった寺田り江さんに今時分の季節に板橋区の吟行を案内してもらったのを思い出してね。私の独断と偏見で板橋区の松月院へ行くわよ。

爽籟の古刹秋帆顕彰碑     星 利生
木犀の金銀和して松月院    大本 尚
危なげに幼子歩く菊日和    寺田り江
砲筒を秋天に向け紀功の碑   佐藤照美
大石の鐘楼囲む昼の虫     吉田ゆり
青銅の庇張り出す鵙日和    小熊秀子
秋の蜘蛛松月院の石灯籠    熊谷彰子
境内に二つの木馬鳥渡る    奥村安代
塀長く木犀匂ふ朱印寺     大木典子

江戸璃:本堂の左手に日本陸軍創設の一人で西洋砲術に長けた高島秋帆を象徴する紀功碑があってね、天保12年5月7日、朱印寺松月院に本陣を置いたと記されているわね。

松手入松粛々としたがひぬ   戸田喜久子
板橋に古刹ありけり朱印状   白石文男
名刹やなんといい風菊日和   甲斐太惠子
松月院供養の灯り曼珠沙華   石坂晴夫
石仏の眼の優しげに草紅葉   油井恭子
輪台をつけて大菊かしこまる  近藤悦子
山門に葷酒不許とや秋気満つ  白石文男
つくばひの水満々と秋気満つ  甲斐太惠子
石榴爆ぜなか幽玄と燃盛る   石坂晴夫

江戸璃:アクセスだけれど東京の人だったら池袋から東武東上線に乗って「下赤塚駅」から徒歩で行けるわよ。


陽を集め人目を引きて石榴熟れ  長屋璃子
鰯雲青銅砲の天捉ふ       山尾かづひろ