文:山尾かづひろ
挿絵:小倉修子
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切絵 コスモス |
江戸璃(えどり):前回の板橋区松月院は吟行日和で何よりだったわね。
穂の解けてまだ風癖の芒かな 柳沢いわを
案内さる座敷窓辺の大芭蕉 福田敏子
柊の古木に宿る秋の風 白石文男
都区次(とくじ):ところで、今回はどこですか?
江戸璃:前回の板橋区は10年ほど前にも行った場所でね、思い出の道を歩くと当時の天を衝くような元気が戻ってくるわね。というわけで今回も板橋区に詳しかった寺田り江さんの案内を思い出して、私の独断と偏見で板橋区の乗蓮寺、別名・東京大仏へ行くわよ。
かまつかや大佛すでに暮の色 星 利生
何耐えるがまんの鬼や昼の虫 大本 尚
一群に園内染めて野菊かな 寺田り江
穂芒のくすぐる足裏布袋様 佐藤照美
鵙鳴いて七福神の横並び 吉田ゆり
大仏の影の薄きに花芙蓉 小熊秀子
花芒池に影置く浮御堂熊 熊谷彰子
閻王に舌を隠して秋の蝶 奥村安代
秋の風天保飢饉の供養塔 大木典子
江戸璃:乗蓮寺は浄土宗の寺として元々は板橋区の仲宿にあって天正19年(1591)徳川家康から朱印地を寄進され、八代将軍・徳川吉宗の鷹狩の際の休憩所、お膳所として使われたのね。長いこと仲宿にあったのだけれど、首都高速道路の建設等で昭和48年に現在の赤塚城址に移って来たのよ。その際恒久平和を祈願して青銅製の東京大仏が建立されたのよ。
いとけなきものの類の木の実かな 戸田喜久子
野分立つ閻魔大王ひと睨み 油井恭子
黄葉中趺坐の大仏世を俯瞰 石坂晴夫
閻王を見入るひととき昼の虫 甲斐太惠子
東京に大仏御在す菊日和 白石文男
きりぎりす我慢の鬼のそびら哉 石坂晴夫
露座仏の厚き胸板秋深し 近藤悦子
年ふりし御堂の庭の新松子 白石文男
秋風やがまんの鬼を撫でてをり 甲斐太惠子
江戸璃:アクセスだけれど東武東上線成増駅北口から赤羽駅西口行(又は志村三丁目駅行)のバスに6分乗って「赤塚八丁目」で下車するのよ。
高西風やがまんの鬼にやさしかれ 長屋璃子
法要の列の途切れて曼珠沙華 山尾かづひろ
露座仏の厚き胸板秋深し 近藤悦子
年ふりし御堂の庭の新松子 白石文男
秋風やがまんの鬼を撫でてをり 甲斐太惠子
江戸璃:アクセスだけれど東武東上線成増駅北口から赤羽駅西口行(又は志村三丁目駅行)のバスに6分乗って「赤塚八丁目」で下車するのよ。
高西風やがまんの鬼にやさしかれ 長屋璃子
法要の列の途切れて曼珠沙華 山尾かづひろ