文:山尾かづひろ 挿絵:小倉修子
菊 |
江戸璃(えどり):先日、大矢白星師は武蔵五日市周辺の大悲願寺、広徳寺を廻って秋草を眺めて来たそうよ。
大悲願寺へ広徳寺へと登高す 大矢白星
脇道は彼岸花道五日市 小倉修子
描かれし地獄極楽萩の寺 小川智子
本堂の庇に入りて秋の蝶 小林道子
正宗公ゆかりの御寺萩揺るる 窪田サチ子
白萩のうねり重ねて庭一面 小林道子
紫苑咲くひときは高く他を制し 小倉修子
金木犀山近くして奔放に 小林道子
茅屋根の草刈り作務や寺の秋 窪田サチ子
山寺の黄花秋桐(キバナアキギリ)裏切らず 小川智子
大寺の屋根の掃除も冬支度 小倉修子
多羅葉に文字こまごまと秋日透く 大矢白星
都区次(とくじ):前回は板橋区の赤塚植物園でしたが、今回はどこですか?
江戸璃:樹齢600年の「影向(ようごう)の松」と「菊人形」を見て「走り蕎麦」の美味いのを食べたいので、私の独断と偏見で江戸川区の善養寺(小岩不動)へ行くわよ。
門柱の上の黒猫小六月 戸田喜久子
背に受ける日ざしのぬくく菊日和 福田敏子
空の色深め老松色変えず 柳沢いわを
松が枝の占める境内秋の寺 白石文男
菊人形袂に小さな莟かな 甲斐太惠子
憂き事も佳き日となりて菊花展 油井恭子
垂直に松の支へ木秋澄めり 白石文男
色かへぬ松や琴の音流れ行く 近藤悦子
恋疎き乙女心よ走り蕎麦 石坂晴夫
ごつごつの木肌に触れつ松手入 甲斐太惠子
零れ散る菊の花びら庫裏の脇 白石文男
十六夜や小岩の不動善養寺 石坂晴夫
古の琴の音色や菊人形 油井恭子
江戸璃:アクセスだけれど総武線の小岩駅から葛西・瑞江方面行バスで、「江戸川病院前」(小岩から4つ目)で下車、徒歩200メートルよ。
大寺の更に堂堂菊日和 長屋璃子
秋の日のかくも穏やか老いの松 山尾かづひろ