2015年11月22日日曜日

尾鷲歳時記(252)

冬の旅 オリーブの巻 
内山思考

弥次馬の一人となりて鶴を追う   思考

海路、巨石をどうやって運んだのか








 「あれ?何のロケかな」 小豆島の傾斜したオリーブ畑の中のレストランで昼食を摂った僕は、皆より先に駐車場に出て一段高い木造のテラスを見上げた。雨でなければそこもオリーブを使った美味しい料理を食べに来る客で一杯のはずだ。旅の二日目は朝早く岡山のホテルを立ち(青木家の姪ごさんが合流)、フェリーで島の西側の土庄(とのしょう)港に着いて世界一狭い海峡に架かる橋を二十歩ほどで渡ったり、特産のオリーブ製品を買ったりしながらその店にやって来たのである。定休日のはずなのにダメもとで連絡すると「開いてます」の返事もラッキーだった。

地元のテレビ取材かな、それにしてはスタッフが多いななどと思って眺めていると、カメラに向かってコメントしていた青年がこちらを向いた。スレンダーな美男子、なんと某人気アイドルグループのメンバー「M・J」クンではないか。臨時休業ならぬ臨時開店の理由は、ヘリコプターでやって来た(小耳に挟んだ情報)と言う彼の存在だったようだ。予

想外の土産話を増やした一行は、一段と賑やかさを増して名勝、寒霞渓(かんかけい)へ、そして「二十四の瞳」の舞台となった岬の分教場へと脚を伸ばしたのであった。

姫路港へ静かな航路












時雨来る航路や遠き島晴れて
オリーブの和名は知らず皹(ひび)薬
旅連れの妻のみマスク写真撮る
水鳥や水の密度に身を浮かせ
咳(しわぶき)を散らしぬ狭き海峡に
島濡らすオリーブ色の冬の雨
紅葉散る島の高嶺の九十九折(つづらおり)
岬まで陸大回り石蕗の花
水洟や分教場に瀬戸の雨
本校というも鄙(ひな)なり神の留守
潮引いて小島繋がる群千鳥
ディナーまずカルパッチョから冬銀河
梟の醒めては人の鼾聞く
帰り花すぐ居なくなる和尚かな
墓ひとつ小春へ据えて自由律(尾崎放哉碑)
寒林に人消え豆腐岩残る(大阪城築城残石群)
星の夜は氷豆腐となる岩か
引力は平等 冬の石切場
冬の航どれが島やら四国やら
北を指すフェリー快適日向ぼこ