文:山尾かづひろ
挿絵:小川智子
落葉 |
都区次(とくじ):前回は東京都北区の旧古川庭園でしたが、今回はどこですか?
江戸璃(えどり):今から10年ほど前に大矢白星師に奥多摩を案内してもらった時のことを思い出したので、私の独断と偏見で「奥多摩むかしみち」へ行くわよ。
吊橋の定員無視し谷紅葉 小林道子
杣人の年木を積むもならひとて 谷川和子
神の留守しかと守りて樫大樹 小林道子
瀬音聞き濡れ落葉踏みむかしみち 谷川和子
昔立場今も休み場山紅葉 小林道子
むかしみちと名付け小春の散策路 大矢白星
江戸璃:昭和13年頃、多摩川中流部の小河内村地区に多目的の大ダムを築く計画が浮上、先ずは青梅街道の付け替え工事が始まったわけ。その後太平洋戦争によって中断、戦後再開されて昭和32年にようやく完成したのよ。現在では奥多摩湖として観光スポットになっているのは知っているわね。多摩川の左岸を忠実に綴る旧青梅街道は半ば廃道になっちゃったけれど、奥多摩町ではその一部をハイキング道路として復活させ、「むかしみち」の名を与えたわけ。先ずはJR青梅線の終点の奥多摩駅へ行くわよ。そこからバスに乗り換えて水根まで行き、奥多摩駅へ戻るようなコースをとるわけ。
帰り花葉隠れなれど色尽くす 戸田喜久子
紅葉散る多摩の吊橋むかしみち 石坂晴夫
吊橋に身をまかせをり冬紅葉 甲斐太惠子
吊橋の一歩にすくむ紅葉谷 近藤悦子
吊橋の揺れゆったりと小六月 白石文男
吊橋の一歩怖怖渓紅葉 油井恭子
奥多摩を錦に染める冬もみぢ 石坂晴夫
旅人の馬頭観音呼びし冬 甲斐太惠子
落葉積み地肌を見せぬむかしみち 白石文男
江戸璃:知っていると思うけれど、奥多摩駅へ行くには先ず新宿から中央線特別快速に乗るのよ。
吊橋を渡り切ったり渓紅葉 長屋璃子
段畑の荒れ放題に山眠る 山尾かづひろ