2011年1月30日日曜日

私のジャズ(7)

衝撃のオーネット・コールマン
松澤 龍一

Chappaqua  Suite (CBS Sony YS-816-7-C)












1960年代の初めにLonely Woman(「ジャズきたるべきもの」と題されたレコードに収録)でオーネット・コールマンがデビューして、ジャズを捨てたジャズ・ファンがかなりいたと聞いている。それだけ、衝撃的なデビューであった。チャーリー・パーカーのビ・バップのマンネリを打破するために、コード進行によるアドリブと言った従来のやり方を完全に無視して、いわゆるフリー・ジャズと言われる分野を切り開いた作品である。その後、60年代はフリー・ジャズが一斉に花開く。多くのエピゴーネンが雨後の筍のように登場する。中には胡散臭いプレーヤーも多かった。そのほとんどが姿を消した。

オーネット・コールマンは本物だったと思う。彼はブルースを唄っていた。あと一人はアーチー・シェップか。そのオーネット・コールマンが1960年代の半ばに出したのが Chappaqua Suite である。Conrad Rooks と言う人が監督をした映画 Chappaqua の全編に付けたサウンドトラックである。最初に弦楽器の合奏による強烈な不協和音に驚かされる。そのあとLP2枚組にわたり、延々とコールマンのソロが続く。映画は監督であるConrad Rooksが見た夢を画像化したものらしいが、残念ながら日本では上映されなかったはず。

その後コールマンはヨーロッパにわたり、スウェーデンのゴーデン・サークル、イギリスのクロイドンでの実況録音盤を発表し、円熟期を迎える。コールマンはおとなしくなった、古典復帰した、堕落したなどと揶揄されることもあったが、そうは思わない。この時期のコールマンはジャズ史上に残るプレーヤーとして記録されてしかるべきものであった。

************************************************
追加掲載(120104)
THE SHAPE OF JAZZ TO COME(来るべきジャズの形)と銘打っているレコードから Lonely Woman  を聴こう。改めて聴いて、名演である。