2011年2月13日日曜日

私のジャズ(9)

ピアノは打楽器である、セシル・テーラー
松澤龍一


JAZZ ADVANCE(TOCJ-50048)CD












久しぶりにレコード屋に入った。今はレコードは片隅に追いやられてしまっているので何と呼ぶのであろう。CD屋、DVD屋では語呂が悪い。一瞬目が留まった。なんと998円、それも新品である。セシル・テーラーのデビューアルバム、JAZZ ADVANCE。超幻の名盤である。ジャズをよく聴いていた40年ほど前、最も入手が難しいと言われたレコードである。当時、雨後の筍のように東京の街に氾濫していたジャズ喫茶のどこにも置いていなかったと思う。それが、たった998円で手に入る。

おおよそ、幻の名盤と呼ばれるものには、聴いてがっかりさせられるものも多い。恐る恐る聴いてみる。一曲目、デニス・チャールスのラテンリズムに乗って打ち出されるセシル・テーラーのピアノに打ちのめされてしまった。すごい、本当にすごい。このCD全編にわたりセシル・テーラーはピアノを打つ、叩く、壊す。実際、コンサートでピアノの弦と切ってしまったり、外れた白鍵が客席に飛んだとの逸話が残っている。やはり、ピアノは打楽器である。肉体そのものを打ちつける打楽器である。メロディとか情感などと言った甘いものは何もない。あるのはセシルの肉体が発する音そのものである。それがスピーカーを通し飛んでくる。

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追加掲載(120104)
では、ジャズの肉体派、セシル・テーラーのソロを。